MCPクライアントとは?
MCPクライアントは必要?直接呼び出しはできない?開発者の疑問を実装例とともに解決。CrewAI、Claude Desktop等の具体例から、あなたのプロジェクトに最適なパターンが見つかります。


Model Context Protocol(MCP)は、LLMアプリケーションと外部ツールを接続する標準プロトコルです。しかし実際にMCPを使おうとすると、「MCPクライアントって必要なの?」「MCPサーバーを直接呼べないの?」といった疑問が生まれがちです。
この記事では、MCPクライアントが何者で、なぜ必要なのかを実装パターンとともに解説します。
1. MCPプロトコルの守備範囲を理解する
MCPクライアントとは、LLMとMCPサーバー間の通信を仲介するソフトウェアコンポーネントです。
まず重要なのは、MCPプロトコルが標準化している範囲を正確に理解することです。MCPが標準化しているのは、MCPクライアント↔MCPサーバー間の通信(JSON-RPC 2.0という形式)と、ツール定義やリソース提供の仕様です。
一方で、LLM↔MCPクライアント間の通信は各社独自形式のままです。OpenAIはtools配列、AnthropicのClaudeはinput_schema、GoogleのGeminiはfunction_declarationsといった具合に、LLMへのツール提供方法は各社バラバラです。
MCPクライアントの役割は、この2つの世界を橋渡しすることにあります。
2. MCPクライアントは本当に必要なのか?
「MCPサーバーを直接LLMから呼べないの?」という疑問は当然です。
技術的には可能です。MCPサーバーは標準的なWebサーバーなので、HTTP通信で直接呼び出せます:
# MCPサーバーにツール一覧を要求
curl -X POST http://localhost:3000/mcp \
-H "Content-Type: application/json" \
-d '{"jsonrpc": "2.0", "id": 1, "method": "tools/list"}'
しかし実用上は困難です。まず、LLMは各社独自形式、MCPサーバーはJSON-RPC 2.0形式のため、相互変換が必要になります。また、MCPサーバーとの初期接続(ハンドシェイクと呼ばれる処理)、セッションID管理、接続維持といったセッション管理も複雑です。さらに、OAuth認証、ユーザー承認フロー、権限管理など、セキュリティ機能の実装も求められます。
これらを毎回実装するのは現実的ではないため、変換・管理を担うMCPクライアントが実用上必須となるわけです。
3. 実装パターン3選
MCPクライアントには、機能の充実度に応じて3つの実装パターンがあります。
まずフル機能型として、AnthropicのClaude Desktopがあります。これはMCP仕様のすべてをサポートする参照実装で、MCPサーバー管理画面、OAuth認証やHuman-in-the-loop承認といったセキュリティ機能、Tools・Resources・Prompts・Samplingという全機能を備えています。
次に軽量アダプター型として、CrewAIのMCPServerAdapterがあります。CrewAIは薄いラッパーでMCPサーバーを統合しています:
with MCPServerAdapter(server_params) as tools:
agent = Agent(
role="GitHub Repository Analyst",
tools=tools, # MCPツールを直接利用
llm="watsonx/meta-llama/llama-3-3-70b-instruct"
)
この方式はToolsのみをサポートし、既存のCrewAIワークフローにシームレスに統合できます。
3つ目がカスタム統合型で、Zed Editor(Rust)やReplit(Web)など、各製品の特性に応じてMCPクライアント機能を独自実装するパターンです。
4. なぜサーバー標準化×クライアント独自実装なのか
この設計は、AnthropicがLanguage Server Protocol(LSP)から学んだ戦略的判断です。
サーバー側の完全標準化により、いわゆるN×M問題を解決できます。1つのMCPサーバーがすべてのクライアントで利用可能になるため、開発効率が向上します。例えばGitHub MCPサーバーを作れば、Claude、CrewAI、Zedすべてで使えるようになり、エコシステムが急速に成長します。
一方、クライアント側の独自実装により、既存製品アーキテクチャとの最適な統合が可能になります。製品特性に合ったUX設計の自由度も保たれ、既存ユーザーベースを壊さない段階的導入ができます。
5. 開発者が知っておくべきポイント
MCPサーバー開発者にとって重要なのは、1つのMCPサーバーで複数クライアント対応が自動的に実現することです。Claude Desktop、CrewAI、Zedなど、個別対応は不要です。
アプリケーション開発者の場合、既存フレームワーク利用時はCrewAI、LangChainなどの軽量MCPアダプターで十分です。専用アプリ構築時には、Claude Desktopのようなフル機能MCPクライアントが必要になります。
実装の判断基準として、Tools機能のみなら軽量アダプター(CrewAI方式)、UI/セキュリティ重視ならフル機能クライアント(Claude Desktop方式)、既存システム統合ならカスタム統合(各製品独自方式)を選択するとよいでしょう。
MCPクライアントは「技術的には不要、実用的には必須」な存在です。
直接呼び出しも可能ですが、プロトコル変換・セッション管理・セキュリティ処理を考慮すると、適切なMCPクライアント実装を選択することで、開発効率とシステムの安全性を両立できます。MCPエコシステムの恩恵を最大限活用するためには、自分のユースケースに最適な実装パターンを選択することが重要です。

通りすがりのラマ🦙
このブログでは個人開発で得た知見や興味のあるテクノロジーに関する記事を執筆します。 日々公開されている情報に助けられているので、自分が得た知見も世の中に還元していければと思います。 解決できないバグに出会うと、草を食べます。🦙🌿 経歴: 情報工学部→日系SIer→外資系IT企業 興味: Webアプリケーション開発、Webデザイン、AI 趣味: 個人開発、テニス